2023年のゴールデンウィーク、タイを訪問した。タイは関西から飛行機で5時間ほどで到着する、海外の中では比較的近い国である。
2023年5月某日(バンコク→マハーチャイ)
バンコクに到着し、荷物をホテルに置いた後、初めに向かったのはマハーチャイ線。バンコクの郊外、Wongwian Yai駅からMaha Chai駅までを結ぶタイ国鉄のローカル線だ。起点のWongwian Yai駅と隣のTalat Phlu駅はBTSと接続していることになっているが、どちらの駅も駅同士が微妙に離れている。

さすがに阪神尼崎と尼崎のような詐欺レベルの離れ方ではないものの、日本で例えるなら京王八王子や京急蒲田のような、歩けなくはないけど積極的に乗り換えたいとは思わない程度の距離はある。この路線は極端な例であるにしても、バンコクを旅行していると全体的に駅の乗り換えがやや遠い印象を受ける。
気温が40度近い中では15-20分程度の距離でも歩くのはそれなりに苦痛だが、お目当てのためには歩くしかない。ひとまず列車の時間の都合が良かったTalat Phlu駅で乗り換えることにした。日陰を探しながら20分ほど歩き、お目当てのマハーチャイ線のTalat Phlu駅に到着した。
とりあえず終点までの切符を購入。乗車時間1時間ほどの旅になるが、日本円だと数百円程度とかなり安価だった。ほどなくしてオレンジ色をまとったマハーチャイ線の車両がホームに到着した。

列車に乗り込むと、クロスシートがなんだか国鉄型車両のような配置で設置されている。それもそのはず、この路線で運用されているNKF気動車(1200形)やTHN型気動車(1100形)は日本製の気動車である。

1985年頃に製造・投入された気動車で、NKFは日本車輌・近畿車両、富士重工の頭文字から、THNは東急車両、日立、日本車輌の頭文字から命名されたらしい(wiki情報)。それを知ってからあたらめて外観をみると、顔はどことなく日本のキハ20に似ているし、車内やドア配置も日本のキハ47のような雰囲気がある。

日本国内の車両との違いは、椅子が駅のベンチのような硬い素材であることと、全車非冷房であること。椅子は固い割に悪くない座り心地。非冷房であることも、走り出すと全開の窓から風が入ってきて気持ちが良いので案外気にならない。たまに植物の綿毛が大量に入ってくるのはご愛嬌。列車は終点まで車体を豪快に揺らしながら軽快に飛ばしていく。
終点のMaha Chai駅は大きな屋根付きの駅で、列車の排煙で若干煙いながらも涼しい場所になっている。この駅には、日本ではなかなか見られない、ホームに所狭しとお店が並んでいるタイプの「駅ナカ」が存在している。

Maha Chai駅での撮影を終えたあと、Ban Khom駅まで徒歩でおおよそ40分の距離を歩きながら撮影してみた。約1時間に1本という列車本数の関係で、撮影回数をある程度確保するためには歩くしかないのだ。軽く言っているが、はっきり言って苦行だった。あまりの暑さに途中タクシーに乗りたくなったが、空車のタクシーがなかなか見つからず、見つかっても止まってくれないため、結局歩き通すことになった。大した距離ではないと思って徒歩移動で撮影回数を稼ぐ選択をしたのだが、実際歩いてみると暑さのせいで体力の消耗が激しく、徒歩移動にしたことを後悔した。写真はBan Khom駅近くのちょっとした森を抜けてくるマハーチャイ線。日差しが強いので植物は元気いっぱいである。

歩いている途中、暑さに耐えかねて、近くの商店で水とパンを購入した。汗で流れたエネルギーと水分を補給した。そのお店の店長さんの計らいでしばらく日陰のベンチを使わせていただき、体力も回復できた。観光客があまり来ないローカル線でカメラを構えている、見方によっては不審な人物だが、あたたかく出迎えてくれて嬉しかった。

Ban Khom駅前に列車と撮れそうな良い雰囲気の寺院を見つけたので、その寺院から撮影することにした。列車待ちの間、日陰探しを兼ねて寺院内を散歩していたところ、大きな犬が暑すぎて日陰でぐったりしているのを発見。当然だが、犬でも暑いものは暑いらしい。

列車の時間になったので予め見つけたポイントにもどってシャッターを切った。「寺院の向こうを走る列車」というタイらしい光景に出会うことができた喜びで、徒歩移動の疲れも吹っ飛んだ。この興奮を求めてわざわざ海外に来ていると言っても過言ではない。実際には暑苦しい気候であるにもかかわらず、写真にするとちょっと爽やかに映ったのも面白い。実際に撮影地にいた時も見た目の雰囲気だけは爽やかだなとは思っていた。気温と湿度が高い分青空が水色に映り、強い日差しにより色が濃く出るからかもしれない。

撮影後は再びマハーチャイ線に乗り、起点のWongwian Yai駅まで戻った。Wongwian Yai駅は始発駅らしく、周囲やホーム上に多数の商店や屋台が立ち並ぶ、活気あふれる駅だった。

飛行機内での寝不足と暑さで体力を消耗したらしく、もうすでに疲労状態。少しだけWongwian Yai駅を撮影した後、時差ボケによる軽い頭痛と闘いながらホテルに戻り、電池が切れたように眠った。
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